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2016.02.02

新しい可能性が生まれる状況をつくる[後編] 大東翼さん

いま、浜松で起きている面白いコト。そこには必ずキーパーソンがいます。
彼ら彼女たちがいるからこそ、面白いコトが起きている。
その発想を紐解くと「創造都市・浜松」の明日のカケラが見えてくるかもしれない。

 

〜自分が暮らす街とどれくらい親密な関係ですか〜

 

大阪で建築家として活躍していた大東さんですが、2010年に開催された、地方都市における建築家の役割や中心市街地の問題を考える「浜松建築会議」※1 をきっかけに、浜松へUターンすることになります。地方都市・浜松についてお聞きしました。

 

大東さんが企画・実施した、水窪にあった古民家の囲炉裏を移築するプロジェクトの風景

大東さんが企画・実施した、水窪にあった古民家の囲炉裏を移築するプロジェクトの風景

 

地域で専門性を生かすということ

「社会が近代化する過程において都市は必然的に拡大していきましたが、最近の都市は以前と違い縮小しつつあります。その新しい都市像のトップランナーに浜松があるのではないかと思っていました。地方都市といっても限界集落では自走できないし、新しいことに挑戦する力が残っていない。その点浜松は、社会問題が顕在化しつつも、チャレンジするエネルギーがある。さらに、道路や鉄道、自然といった環境が充実しているのもポイントです」

「東京などの大都市は高密度で高速と言えます。多様な属性の人も集まりやすい。わかりやすく何かがおきる都市だと思います。一方、浜松はど田舎でもなければ大都市圏でもない。密度というか濃度がほどよいのが魅力だと感じました。何も起こらないかもしれないけれど、何か新しいことが生まれるならそれは浜松かな、そんな想いで2011年に帰ってきました。浜松に戻って4年経ちますが、その可能性は変わらず感じています。ただ4年もすると内側の人間になってきたので、改めて外との往復も必要だと感じています。埋没しなければ見えないこともあるし、埋没すると見えなくなるものもありますね」

 

取材は、大東さんが大と小とレフ

取材は、大東さんが設計した黒板とキッチンで行われた

 

ここ数年、まちなかが面白くなった理由のひとつとして静岡文化芸術大学(以下、文芸大)が開校して10年が経ち、卒業生や在校生がまちと積極的に関わっていることを理由に挙げる人がいます。黒板とキッチンの運営、さまざまなプロジェクトを行うにあたり、地元の学生と接することも多い大東さんはどのように感じているのでしょうか。

「街にいい影響はあると思います。学生という立場の存在が街にいるだけでも大きいです。僕が帰ってきた4年前より多くの学生が街に関わっているのを見ます。以前、囲炉裏を移築するプロジェクトがあったのですが、そこでも文芸大の学生に手伝ってもらいました。一般的な仕事では、営業やデザイナー、カメラマンなどと役割が明確になっているので、あえて立場を越境することでアイデアを広げ、ブレイクスルーを誘発しようと試みます。でも、囲炉裏プロジェクトに集まったメンバーはもともと知り合いというだけの関係だったので、各人の特長を踏まえ、作業係、マネジメント、記録係などと役割をきちっと決めました。専門性がゆるくつながる環境を構築することで、個人の創造性を超える可能性が生まれるのではないかと考えました」

 

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このプロジェクトの記録をまとめた『いろり日記』で、大東さんは以下のように述べています。「地域でプロジェクトが生まれて育っていく為には個人が専門性(得意な事)を持ち寄ることと専門性を超えて一歩前へ出ることが求められます」。この一文から大東さんが学生に何を期待していたのか、プロジェクトを通じて何を伝えたかったのか感じることができます。

状況を自分事として捉え直す

「今、浜松都市建築映像ワークショップというものをしています。12月から高校生を対象にしたワークショップを行ったのですが、これも文芸大の学生に協力してもらいました。まちの映像を撮ることで、普段は意識しない都市や建築に対する新しい視点を獲得し、自律的に思考できる力を養うことを目的にしています。浜松の高校生の多くは、卒業後、進学などで市外へ出ていってしまいます。その前に、自分の住んでいる街を意識的に引き寄せることで、都市と個人の関係を再構築する。そんな経験をすることで、知らない街に住んでも強く生きていけると思います」

「これは都市を個人で解釈する訓練になります。高校生には、そんな捉え方をしていいんだという気付きを感じてもらいたい。本人が無意識に辿ってしまう思考の経路ってあると思います。「やったことがある/ない」「自分ができること/できないこと」という単純なことでも改めて意識することが重要です。学校の廊下を走らないとか、赤信号を渡らないとか、安全を考えればもっともだし、社会性を身につけることは大切だけど、妙に遠慮したり、責任を回避することを続けていると、知らない間に去勢されていってしまう。正しさを問い直すことは面白さの発見でもあると思っています」
「去勢されているのか、自分で体験して自制しているのか、その間には決定的な溝があります。就職活動などで、『あなたの個性は何ですか?』って聞かれるけれど、学生にしたらコクな質問ですよね。自分と外側の関係からしか自分について言及できないはずなのに、外側から自分を意識するような経験が少ないから」

 

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「昔は空き地があって自由に遊ぶことができた。でも今は、空き地もないし、遊ぶための道具もない。黒板とキッチンは、素朴な道具がちょっとだけある空き地のような役割なのかも知れないですね。実はここには週1回しか来てないんですよ(笑)でも、その場所が存在するから、その街が好きという感覚ってありません? 自分がそこに行かなくても別にいい。たまにしか行かないから、偉そうにその場所を語れないけれど、その場所が好き、みたいな。誰かのためにというよりも、自分が楽しめる状況をつくりたいんです」そういって笑う大東さん。

他者と応答を繰り返すことで自分の輪郭がうっすら見えてくる。黒板とキッチンは、自分と外側を繋ぐ場所なのかもしれない、そんなことを感じました。

 

※1 浜松建築会議
浜松出身もしくは浜松で活動する建築家、建築学生が中心になり、地方都市における建築家の役割や中心市街地の問題を議論し、日本の真ん中から私たちの未来を描く会議。2010年、2011年、2013年と開催された。(出典/http://www.co-ha.net/about

 

大東翼
兵庫県生まれ、浜松市育ち。株式会社大と小とレフ代表取締役。建築家として大阪にて活躍後、2011年、浜松に拠点を移す。住宅や店舗の設計、さまざまなプロジェクトの企画運営に携わる。2013年には、鈴木一郎太とともに大と小とレフを共同設立。

 

株式会社大と小とレフ
セミナールーム「黒板とキッチン」の設計・企画・運営、浜名湖花博2014「花みどりアート回廊」のアートディレクション、「楽×学2014」の企画運営のほか、ふじのくに⇄世界演劇祭2015では演劇の演出を行うなど、活躍のフィールドは多岐にわたる。

 

黒板とキッチン
ゆりの木通りにある、キッチン設備があるセミナールーム&交流スペース。セミナーやワークショップ、イベントなどを開催するほか、日中はフリースペースとして解放している。 http://kokubantokitchen.wix.com/bbandk

 

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