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2016.04.25

しなやかに生きるためのスキルを取り戻す[後編] 大村淳さん

今、浜松で起きている面白いコト。そこには必ずキーパーソンがいます。
彼ら彼女たちがいるからこそ、面白いコトが起きている。
その発想を紐解くと「創造都市・浜松」の明日のカケラが見えてくるかもしれない。

〜30年後の浜松を想像してみてください〜

 

桑原建設で行われたフォレストガーデンプロジェクトの様子

 

自然の恵みをいただく

「浜松にある桑原建設さんと一緒に、モデルルームの庭をフォレストガーデンとして整備しました。フォレストガーデンは、簡単に言えば「食べられる庭」自然の森をモデルに、必要な食べ物や、暮らしに利用できる実りを持続可能な方法でより多く手に入れるためのデザイン手法です。こちらのガーデンには、ストロベリーグアバやユスラウメ、壁にはブドウを伝わせたり、ハーブにワイルドストロベリーなど、多種多様な果樹を植えています」

「畑で育てる野菜と違って、手入れが簡単で労働コストが少ないのも特徴です。基本的に肥料や世話はいらなくて、イヌエンジュなど窒素を固定する植物を植えて肥料の代わりにしたり、揮発性の香りを出すレモンバームは虫除けにも有効で、除草剤の必要もありません。ビジネスとして商売する農園は単一のものを大量に栽培していますが、もし災害があった場合、全滅する恐れがあります。でも、フォレストガーデンのように少量多品種の栽培は、何かあってもしなやかに対応することができます」

 

フォレストガーデンで採れたレモンバームと緑茶をブレンドしたハーブティ

 

「単純に森を再現するのではなく、そこで暮らす人に合わせてガーデンをデザインしていきます。食料自給率を高めたい人は、栗やナッツなどカロリーの高いものを植えますし、おすそ分けをしたいという人には、たくさんの実をつけるバラ科の植物を植えるなど、住まい手の暮らしに合わせて自然をリペア(復旧・再現)していく感覚です。植物の特性はもちろん、枝や根の広がりなども踏まえて庭を造っていくので、マニアックな知識がどんどん増えて完全に植物オタクですよ」と笑う大村さん。

「海外では確立されているフォレストガーデンの手法は、日本ではまだまだ認知さていません。とはいえ、田舎に行けば農家の庭先に柿の木や梅があるように、この考え方のルーツは日本にあるんです。大正時代に活躍した賀川豊彦さんが提唱した立体農業というものがベースになっていて、斜面や山林が多い日本において効率よく農業を行うために考え出された手法です。欧米では機械式農業が盛んですが、肥料を追加していかないとどんどん土地がやせていきます。持続可能な農業を考えたとき、この立体農業が改めて注目されることになったんです」

トランジションタウンの発祥の地であるイギリス・トットネスでは街路樹がヘーゼルナッツだったり、アメリカ・シアトルの公園はコミュニティガーデンとしてこのフォレストガーデンの手法が採用されたり、災害時のバックアップとしても機能して取り入れている自治体もあるようです。

 

雨水を利用して、庭の植物に水をあげる

 

自分が生きていない世界をイメージする

森が1日でつくられないのと同じように、フォレストガーデンも時間がかかります。桃栗3年、柿8年といわれるように、フォレストガーデンが最大生産量になるのに15年ほどかかるといわれます。その後はメンテナンスをしっかりと行えば生産は持続していきます。

「目まぐるしいスピード進む時代にあって、とても気の長い話ですよね」と笑う大村さん。トランジションタウン浜松は、持続可能な地域社会を実現するため、30年を1つの目安としてさまざまな活動を続けています。

 

 

「以前、地域の人も一緒になって30年後のビジョンを描くワークショップを行いました。そこでは、地元の木を使った家に住みたいとか、森の防潮堤や電力自給率を100%にとか、シェアやおすそ分けの文化が広まっているなど、さまざまなビジョンが描かれました」

「30年後の未来というと、年配の人にとっては自分が生きていない世界を考えることになるので、フラットな視点で本質的な価値に立ち返った未来を描けたようです。今日明日といった目先の利益ではなく、長期的な時間軸でものごとを考えることはとても重要なことだと思います。アメリカインディアンは7世代先、つまり200年以上先の人のためになるかで判断するという考え方もあるくらいですし」

 

環境が個人を輝かせる

「ワイルドストロベリーは3シーズン実をつけるんですが、生産性が低く商業的には価値がありません。それでも家庭菜園のレベルでは十分な量の実を採取することができます。ビジネスというフィールドでは価値がないのかもしれませんが、特定の範囲内ではとても価値のあるものに変わるというのは面白いですよね。自然からはたくさんのことを学ぶことができます」

「エネルギー問題にしろ、食の自給率にしろ、多くの社会問題は国や行政に解決してもらうという発想になりがちです。でも小さな規模でなら、自分たちの得意なことを生かすことでどうにか解決できるかもしれません。この春には蜆塚に店舗をリノベーションしてコミュニティスペースをオープンさせます。この場所が地域を繋ぎ、自ら活動するきっかけのひとつになってくれたらうれしいですね」

貨幣経済という枠の中にいると、誰がつくったか分からないものを食べ、誰かに感謝を伝えるという機会はほとんどありません。トランジションタウン浜松が行っていることは、暮らしを誰かに委任してしまうのではなく、自分の側に意識的に引き寄せ、改めて顔の見える関係を築こうとしてるのではないか、そんなことを思わずにはいられませんでした。

大村淳

「トランジションタウン浜松」立ち上げメンバ