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2018.12.13

誰かのためが、自分のためになる[後編]ぶっとびアート / 笹田夕美子さん・村松弘美さん

今、浜松で起きている面白いこと。
まだ、小さなムーブメントかもしれないけれど、
なぜか惹きつけられてしまう不思議な魅力がある。
その秘密を探ってみると、「創造都市・浜松」の明日のカケラが見えてくるかもしれない。

 

~心から楽しいと思えることは何ですか~

 

子どもも、大人も、みんなが夢中になって遊べる「ぶっとびアート」。後編では、10年以上にわたり継続し続けている秘密を、笹田夕美子さんと村松弘美さんに教えていただきました。

 

役に立たないものの中にある、新しい価値

 

ーーこの活動はアートになるんでしょうか?

 

(村松)そう聞かれると、ちょっと違うというか……

 

(笹田)名前に「アート」って入ってるんですけどね(笑)

 

(村松)どちらかというと、場づくりのつもりでやっています。作品を作りたいわけではない。でも、できたものはとても面白い。これが正解ですというのはなく、ぶっとんだものを作れたらいいなと思っています。

 

(笹田)私たち、この活動を通じて世の中を変えようとは思っていません(笑)。そもそもやらなくてもいいし、「しんどくなったらやめようね」とよく話しています。

 

▲笹田夕美子さん

 

ーー「やらなくてもいいし…」というお答えは、予想外でした(笑)。でも10年以上続けてきた原動力はどこにあるんですか?最終目標のようなものはないのでしょうか。

 

(笹田)ぶっとびアートは、面白いことだけにこだわってやってきています。もちろん、企画や準備など、楽しむためにはある程度の労力は必要です。でも、仕事のように、目的を明確にして、結果を求めていくのとは違う。私たち自身の遊びとし、ワクワクすることを最優先にしています。

 

(村松)目的や結果も大事ですが、それとは違うものも大事にしたいんです。役に立たない、価値がないように見えるものから、新しい価値を見いだしていきたいと思います。

 

ーーぶっとびアートの楽しさってどこにあるのでしょうか?

 

(村松)想像もしない、面白いものができたときですかね。作ったものを壊すことまでがルーティンになっている子もいて、そういうのを見るのも楽しいですね。

 

(笹田)私は作っている人のこだわりを見つけるのが好き。あの子、どのテーマをやってもパンダを作るよねとか、あのお父さん、あれが好きなんだ、みたいな(笑)

 

▲村松弘美さん

 

何も考えないからこそ、続けられる

 

ーー「むりやり母の日」とか、「あかちゃんがせんせい!」、「こんなんあるんですけど、どうにかなりませんかね?」など、ワークショップのタイトルからしてユニークですが、企画はどのように生まれるのですか?

 

 

(村松)毎回ワークショップが終わったあと、近くの中華料理屋さんでふりかえりながらごはんを食べていて、そこで次の企画が生まれることもあります。ネーミングは大切にしていて、「バンガローでガンバロー」とか(笑)

 

(笹田)もう、言ってみたかっただけ(笑)。「石とタッパー、さぁどう遊ぶ?」というむちゃぶり企画をしたんですが、そこに来た子どもたちがもってきたお気に入りの石がなんとも素敵(笑)。そうだ!それなら子どもたちと中田島砂丘へ行って石を拾おう、さらに拾った石に値段を付けて売ってみようという企画が生まれたこともあります。

 

(村松)ひらめいたものがそのまま企画になってますね。これってぶっとびぽくない?と企画を持ちかけられることもあります。

 

 

ーー「ぶっとびぽい」って、どういうことなんでしょうか。

 

(村松)遊び半分というか、悪ノリというか(笑)。どこまでいっても遊び。あるアーティストの人に、「はてしなく遊ぶよね」と言われたことがあります。

 

ーー活動を続けられてきて、ご自身に変化はありましたか?

 

(笹田)浜松市の補助金をもらったことがきっかけで認知度があがり、人とのネットワークが広がりました。「ぶっとびさんですよね」って声をかけられることも増え、一緒に何かしようという話もいただくようになりました。

 

ーー今後の展望を教えてください。

 

(村松)やはり、長く続けていきたいと思います。嫌になったら止めるつもりですけど、でも止めるとさみしいし、続けるための楽しい方法を探し続けると思います。二人にとってぶっとびアートは、やりたいことができる大切な場ですから。

 

 

笑いが絶えないインタビューからは、どんなものでも包み込んでしまうお二人の優しさを感じることができました。障がいがある子どもたちのために始めた活動は、いつしか、子どもだけでなく、大人にとっても、笹田さんと村松さんの二人にとってもなくてはならない場所になっていきました。二人はそれを、“精神的な健康を得る場”だと言います。半分自分のため、半分社会のため。そんな半社会的な立ち位置のぶっとびアートだからこそ、誰にも縛られず、自由であり続けられるのかもしれません。

 

ぶっとびアート
2005年、静岡文化芸術大学でまちづくりを学び、子どものワークショップやデザインを専門とする村松弘美さんがNPO法人クリエイティブサポートレッツの一講座としてスタート。2006年に臨床心理士の笹田夕美子さんが加わり、ぶっとびコンビを結成。障がいのある、なしに関わらず、子どもと、子どもを取り巻く大人たちが、その人らしくいられる場所作りを目的に活動を続けている。「発電しよう!」「拾ったものを売ろう!」「石とタッパー、さぁ、どうあそぶ?」など、これまで120回を超えるワークショップを開催している。
https://buttobi.hamazo.tv/

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