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2019.12.03

ものづくりの原点にある、遊ぶという感覚[後編]デザイン寮 / 岩佐啓輔さん・小瀧浩さん・山野裕之さん

〜体験を共有する喜びとは〜

 

仲間とともにアイデアを出し、何度も試作を繰り返す。完成した作品を多くの人に体験してもらい、新しい価値を提案し続ける「デザイン寮」。後編では、どのような考えのもとに作品を制作しているのかお話しを伺います。

 

▲「デザイン寮」の岩佐啓輔さん(写真中)・小瀧浩さん(右)・山野裕之さん(左)

 

ーー「デザイン寮」らしい作品というと、どういうものがありますか?

 

(山野)「LOOP TABLE(ループ・テーブル)」ですかね。

 

(山野)子どもの頃、お箸で食器をバチバチ叩いて面白いみたいな感覚あったと思います。この作品は、その面白さを増幅させようとしたものです。物を叩くことでどんどん音が繰り返され、自然とリズムに乗れちゃう。日常の音遊びを増幅させて楽しく遊べるようにした作品です。

 

(岩佐)お箸でお茶碗を叩くのって行儀が悪いし、さすがに大人になったらやらない。どうしたら怒られないで遊べるかって考えたのがそもそものきっかけです。とはいえ、チャカチャカ好き勝手に叩くと、ただうるさいだけなので、音をループさせるアイデアを取り入れています。適当に叩いてもリズムを作ってくれるので、誰でも音を楽しめる作品になっています。

 

ーー同じように音をループさせる「Buonda(ブオンダ)」という作品もありますよね。

 

(小瀧)こっちは機械を持ち運べるので、いろいろな場所に出かけて、いろんなものを叩けるのが特徴です。プロモーションの映像では、浜松駅の手すりや有楽街で音を採取して曲にしています。

 

(岩佐)「Buonda(ブオンダ)」も、最初は音がぐちゃぐちゃになってしまったんですけど、ステップシーケーンサーで決まった順番にコントロールすることでリズムが制御されるというか、音楽っぽくなる。身の回りにあるけれど楽しさをあまり感じないものを、どうやったら面白く、楽しく感じられるかうまく表現できた作品だと思います。

 

ーーループさせる制約というか、音をコントロールすることで、楽しさや面白さを誘発しているのがさすがですね。

 

(山野)例えばループテーブルは、試作をして分かったことがありまして。最初の試作でただ鳴った音をループさせてもまったく面白くなかったんですよ。でもその時にジャストアイディアで四つ打ちの音が裏で勝手に同期して鳴るように変えてみたら、すごく曲が分かりやすくなってノリやすくなり、めっちゃ面白くなったんですね。そういうのは、作りながらでないと分からないんですよね。

 

ーーみんなで作りながら気持ちいい音を探っていくのが、セッションしながら気持ちいい音を作りあげるバンドみたいですね。

 

(山野)……バンド、っぽいかもしれませんね。(一同笑)

 

(岩佐)作品を作って、体験してもらって楽しんでもらうというのを大事にしているという点では、音楽を作って、ライブで楽しんでもらうバンドと似ているのかもしれませんね。僕たちにとってお客さんの反応もとても重要で、この作品のこの部分が気持ちいいですねという感想が、僕たちも気付いていなかったポイントだったりすることもあります。あ、ここが面白いと思うんだって。だから、展示会では、作品の押しポイントがどんどんブラッシュアップされていく(笑)

 

ーー「サウンドデザインファクトリー」では、どのような作品を出展するのですか?

 

(山野)実は自分たちもまだ分かってないんです(笑)。一昨日の打ち合わせでも変わりましたし、まだ発展中です。

 

▲イベントで使う予定のマスクを持って、構想を語る山野さん。

 

(岩佐)まずは自分たちがもっと納得して面白いと思うためにはどうしたらいいのか試行錯誤しています。テーマは決まっていて、「声」。技術的にすごいものというよりも、楽しい作品になると思います。

 

(小瀧)ものすごく子ども向けという訳ではありませんが、親子連れの方々にもきっと楽しんでもらえると思います。

 

(山野)子どもが楽しいっていうのは1つの指標になると思っています。大人は、はいはい、こういう作品ですねって理解しようとするけど、子どもは面白い、つまらないがはっきりしている。感覚を優先させるというか。過去の作品でもハマる子は1時間ぐらい延々と遊んでましたし(笑)

 

ーー今後の目標を教えてください。

 

(山野)そんな高尚なものは…(笑)

 

(小瀧)のんびりでもいいから、ずっと続けていきたいですよね。

 

(岩佐)なにかすごい作品を世の中に提示したいとか、評価されたいというよりも、面白いものを作って、みんなで楽しむ。それを変わらず大切にしていきたいです。

 

 

照れくささをごまかすかのような飄々としたインタビューは、笑いにあふれていました。作品を気の合う仲間の中だけで完結するのではなく、多くの人に体験してもらうことで楽しさが伝播しているデザイン寮の活動。新しい価値が生まれるためには、計算だけではなく、「楽しい」「面白い」という感情がとても大切なのかもしれません。

 

デザイン寮
2010年、浜松のメーカーに務める同期によって結成。「アイデアを出して、試作をして、人に触ってもらって新しい体験を提供したい」人たちが集まった集団。自作の電子楽器を製作し、体験してもらうことを活動の中心にしている。「Maker Faire Tokyo」「サウンドデザインフェフェスティバルin浜松2017」、「サウンドデザインファクトリーin浜松2019」などに出展。
https://design-ryou.com/

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