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2020.02.12

誰だって自分たちのまちを変えられる[前編]浜松PPPデザイン / 松島弘幸さん・鈴木裕矢さん・藤田超さん

〜あなたは、今の浜松が好きですか〜

 

 

突然ですが、「PPP」という言葉を知っていますか? Public Private Partnership(パブリック・プライベート・パートナーシップ)の略で、「公民連携(官民連携)」とも呼ばれています。行政と民間がパートナーとなって、さまざまなサービスや事業を行っていく仕組みです。今回は、そんな「PPP」を団体名に掲げ、浜松城公園で行われた「防災×キャンプ PUBLIC DAY」や「浜松ローカルコーヒーフェス」などを運営する「浜松PPPデザイン」の松島弘幸さん・鈴木裕矢さん・藤田超さんを訪ね、その思いやまちづくりについてお話しを伺いました。

 

▲松島弘幸さん(写真左)・藤田超さん(中)・鈴木裕矢さん(右)

 

ーー「浜松PPPデザイン」を始めたきっかけを教えていただきたいのですが、松島さんと鈴木さんは、2015年に行われた第2回リノベーションスクール@浜松(※1)で出会ったと聞きました。

 

(松島)はい。未来の子どもたちのために、まちをちゃんと残したいと思い参加しました。

 

(鈴木)僕はまちづくりに興味なかったんですけど、リノベーションスクールの担当者から申し込んでよと誘われて。当時、独立したばかりだったし、何か仕事につながればいいかなと思って、何をするかもよく分からずに参加しました(笑)。チームのみんなで担当物件の活用方法を考え、管理運営する家守社(やもりしゃ)をつくるんですけど、ちょうど熊本地震が起き、耐震性のない担当物件のビルに1,000万円以上の投資をすることはリスクが高いとなって断念。でも、それをきっかけに、その後、まちづくりにのめり込んでいきました。

 

ーーまちづくりに興味なかった鈴木さんが、のめり込むようになった理由は何ですか?

 

(鈴木)知ってしまったから。今の浜松のままではダメだって知って、自分の責任の範囲内で何かしなければと思うようになりました。松島さんは移動式カフェの店主だと思って話をしていたら、「俺はコーヒーを売ってるんじゃねぇ。コミュニティをつくりたいんだ」って言うから、コミュニティって何って聞いたら、よく分からないって(笑)

 

(松島)当時はうまく言語化できていなかったんですよね(笑)

 

(鈴木)その頃、民間主導による公民連携のまちづくりの事例としてよく取り上げられる「オガールプロジェクト」(※2)を企画・運営している株式会社オガールの岡崎正信さんの講演を聞く機会がありました。オガールは、民間の発想で、税金に頼らずに市民の本当に欲しいものをつくり、にぎわいを生んでいる。岩手県にある紫波町という人口3万人の町に、年間100万人もの人が訪れる。松島さんのやりたいことってこれなんだって理解したんです。PPPという言葉も、このとき初めて知りました。

 

(松島)その後、リノベーションスクールの関係者が行っている「公民連携プロフェッショナルスクール」に、今日はいないけど、浜松PPPデザインのメンバーでもある建築家の松本憲くんと裕矢さんたちと参加し、より具体的にまちづくりの勉強をしていきました。

 

ーーチームになって、まずどんな活動をしたんですか?

 

(松島)2017年の3月に浜松市立北小学校が閉校することを知りました。僕が公共空間でカフェをしたかったのもあり、デザイナーの裕矢さん、建築家の松本くんと、浜松市へ利活用の提案をしたのが最初ですね。結果的に採用されなかったんですが、北小に防災学習センターを設けるという話があり、浜松市役所のアセットマネジメント推進課や危機管理課の方たちと知り合うことができました。

 

彼らと話をしていて知ったんですが、浜松城公園のブランコは災害用テントになるし、ベンチは非常用トイレになる。市民にもあまり知られていないし、市の担当課の人も実際に使ったことはほとんどないと言う。だったら、それを伝えるイベントをしようと、2017年4月に「防災×キャンプ PUBLIC DAY」を開催することになったんです。

 

 

(鈴木)アセットマネジメント推進課や危機管理課、公園課、公園管理事務所など、いろんな人たちを巻き込み、縦割りと言われる行政に、浜松PPPデザインが横串を入れる存在になれたと思います。イベント後は、防災機能がある浜松城公園のことを紹介するテレビの取材が入り、当初の狙いも実現しました。

 

(松島)裏話をすると、もともと裕矢さんが「公園でやりたいことは、寝たい」と言い出して、「それならキャンプする?」って話になったんですよね(笑)。でも、こっちのやりたいという一方的な思いだけではダメで、行政が抱える課題と、僕たちがしたいことや、できることをうまくミックスするというのは、公民連携の基本的な考え方です。

 

ーー藤田超さんは他の3名よりも上の世代ですが、どうして浜松PPPデザインに加わったんですか?

 

(藤田)中田島砂丘がきっかけなんです。俺はずっと県外で働いていて、「防災×キャンプ PUBLIC DAY」の少し前に浜松に帰ってきました。それで、ファーストキスをした思い出の場所である中田島砂丘に行ったら、巨大な防潮堤ができていた。市にどういうことって聞いたら、会議で決まったことですからという返事。これはなんとかしないといかんぞと思っていたら、防潮堤について考えるシンポジウムが市民主体で開かれていて、あ、自分のまちに無関心じゃない人もいるんだ、と気付いたんです。自分からは何もできないけど、無関心じゃない人を応援することならできる。そんな時に浜松PPPデザインと出会い、建築家としてサポートすることにしました。

 

(鈴木)浜松PPPデザインって、イベンターだと思われているところがありますが、そうではないんです。イベントはあくまでも手法であって、僕たちはこんなまちをつくりたい!っていう目的を達成するために活動しています。「居場所づくりでシビックプライドを増やすまちづくり」というミッションを掲げていて、「防災×キャンプ PUBLIC DAY」や「浜松ローカルコーヒーフェス」も、このミッションを実現するために企画したものなんです。

 

▲浜松PPPデザインが掲げるミッション「居場所づくりでシビックプライドを増やすまちづくり」。ミッションを遂行するために5つのステップが設けられている。

 

自分たちが欲しい暮らしを手に入れるために、自ら行動を起こし始めた「浜松PPPデザイン」。後編では、彼らのさらに真剣な思いが続きます。

 

※1 リノベーションスクール
リノベーションを通じた都市再生手法を学び、体験する場。受講者は3~4日間でリノベーションの事業プランを練り上げ、最終日に遊休不動産のオーナーに提案し、スクール後にその提案をもとに実事業化を目指す。
リノベーションスクール https://re-re-re-renovation.jp/schools/about
浜松リノベーションまちづくり https://hama-rino.com/

 

※2 オガールプロジェクト
補助金に頼らない“稼ぐまちづくり”をコンセプトにした、民間主導の公民連携プロジェクト。10.7haの敷地に8種の飲食店や7つの販売店、2つの体育館、ホテル、図書館、町役場といった施設を設置。コミュニティを原動力にまちの魅力を発信している。https://ogal.info/

 

浜松PPPデザイン
「タタズミcoffee」店主であり、公民連携プロフェッショナルスクール研究員である松島弘幸と、グラフィックデザイナーでときどきカメラマン「空色デザイン」代表の鈴木裕矢、new&s代表で、フォルム設計事務所所属する建築家の松本憲、設計事務所アーキジャム代表・藤田超の4名からなる任意団体。公民連携にとらわれず、独特のアイデアとデザインセインスでまちづくり全般に関わる。「防災×キャンプ PUBLIC DAY」(2017)、「ローカルコーヒーフェス」(2018・2019)、「MikkaBeat」(2018)などを企画・運営。
https://www.hamamatsu-ppp.com/

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