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2022.08.01

自分の価値観を持ってチャレンジを続けること[前編]トリイソース/鳥居大資さん

浜松市中区にある「トリイソース」は、1924年創業以来、木桶熟成にて伝統のソースを作り続けています。素材にこだわった優しい味わいは、多くの人達に長年親しまれています。

そんなトリイソースでは、2022年6月に業務用の砂糖・塩が入っていた紙袋を再利用したトートバッグをトートバッグ専門ブランド「ルートート浜松オフィス」(※1)と障害者就労支援施設「引佐草の根作業所」(※2)と協力し製造・販売しました。

不用品に新たな価値を加えて再生する「アップサイクル」のトートバッグを作ろうと思ったきっかけや、アップサイクルトートバッグから見えるトリイソースの考え方、浜松で長年親しまれる企業としての想いを3代目社長である鳥居大資さんにお聞きしました。

 

――アップサイクルトートバッグを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

浜松市のリノベーションスクールでかばんメーカーのルートートさんと出会い、「何かバッグを作りませんか?」と提案されたのがきっかけです。ただ、提案された当時は今販売しているTシャツの単なる形ちがいのものを作るイメージしかなく、それではあまり意味がないと感じていました。

そのとき、新潟の雑貨屋で見た米袋を使ったトートバッグのことを思い出しました。普通だったら捨てられるはずの米袋に息を吹き込み生まれ変わらせていたのが印象的でした。そこで、自社で廃棄している砂糖や塩の空き袋を使ってトートバッグを作ってみたら良いんじゃないかと思いました。

 

――トートバッグの製造には「草の根作業所」さんも入っていますね。

はい、製造にあたり、ただ袋を利用して作るだけでは面白くないな、何か価値を加えたものにしたいなと考え、ルートートさんに相談したところ、引佐草の根作業所さんとお付き合いがあるが、作業所さんはコロナ禍の影響で仕事が減ったというお話を聞きました。それならば草の根作業所さんにお願いしてみようと。

作業所の方にとっては、今まで扱ったことのある布素材ではなく紙素材になるので、新たな挑戦となったと思います。しかし、慣れない素材だからこそ集中力を活かし丁寧に作業してくれました。

 

▲直売所の様子

写真内左下のトートバッグが今回製作されたもの

 

▲直売所にはトリイソースの様々な商品が並びます

 

――お客様からのトートバッグに対する反応はどうでしょうか?

店舗での販売よりも、インターネット販売の方が非常にヒットしています。対象を1つのエリアではなく全国に広げることで、アップサイクルの考えに関心を持つ人の目に留まりやすくなりました。

インターネットのある現代だからこそ、できることだなと。

 

――アップサイクルトートバッグを通して伝えたいことはありますか?

このバッグをきっかけに、他のメーカーも製造の工程で廃棄しているものをアップサイクル製品にする動きが出てきたら嬉しいです。浜松には草の根作業所さんのように製造作業をしてくれるところ、ルートートさんのように製品を形にしてくれるところがあるので、メーカーの副産物的なものとしてアップサイクル製品が作られ、それが増え新たな「浜松らしさ」となれば素敵ではないでしょうか。

 

また、アップサイクルトートバッグはトリイソースからの企業メッセージを表したものでもあります。極端に言うと、バッグを使ってお金を儲けたい訳ではなく、企業の価値観や意義を盛り込んだものを作りたかったんです。時代の流れはシフトしていて、物質的な差別化が必要になってきていると思います。例えば、「服」を例に考えてみましょう。安ければ安いほど良い、という人もいれば、このデザイナーのものがいいという人、はたまた素材を重視する人など、どこに価値を見出すかは本当に人それぞれだと思います。

食品会社で言うと、美味しさのために本当に良い部分だけを使用して、まだ食べられる部分も捨てる会社、一方で食べられる部分は全て使い切りなるべく廃棄を減らす会社、それぞれあると思います。トリイソースは後者です。これはどちらが正解というものではなく、会社としてのスタンスだと思います。トリイソースは使えるものは使い切る、という考え方であり、そのメッセージをアップサイクルトートバッグは表しています。

▲アップサイクルトートバッグを通してトリイソースの考え方に共感してもらえたら嬉しい、と話す鳥居社長

 

――最近よく耳にする「SDGs」に通じる考えなのでしょうか。

情報発信のときは「アップサイクル」とか「SDGs」というワードを使った方がキャッチーなので使っていますが、実はそういった言葉で表現することには葛藤があります。

昔の日本は、「もったいない精神」、使えるものは最後まで大事に使い切る、という考え方だったと思います。それが欧米の大量消費の考え方に移り変わり、今また「SDGs」や「アップサイクル」というワードが新たに入ってきて持続可能性が重視されつつあります。私はその欧米からのワードに当てはめるのに違和感があって、「SDGs」というよりは古き良き日本の伝統に戻しているつもりです。

昔の良き考えを大事にするトリイソースの価値観を伝えたいんですが、なかなか情報発信の際にはその想いが伝えられずもどかしく思っています。

 

(※1)トートバッグブランド“ルートート”ブランドサイト

https://rootote.jp/

(※2)引佐草の根作業所ホームページ

http://www.inasa-kusanone.com/

 

~後編へ続く~

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