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イベント2019.03.05

シンポジウム「音が都市を創る~サウンドデザインが未来を拓く~」実施レポート

平成31年1月31日(木曜日)に、シンポジウム「音が都市を創る~サウンドデザインが未来を拓く~」を開催しました。

このシンポジウムは、浜松市が進めている、創造的な視点やこれまでにない手法で音の力を社会に応用する「サウンドデザイン」の取り組みを題材に、創造都市に期待されている新たなチャレンジと、そこから広がる都市の未来の可能性について考えるため、創造都市ネットワーク日本(CCNJ)の総会に合わせて開かれました。このレポートでは、シンポジウムでの議論の内容をご紹介します。

 

前半は、パネリストの皆様から、ご自身の日頃の取り組み、音や音楽、サウンドデザインに対する考えをプレゼンしていただきました。

▲川田学さん

ヤマハ株式会社デザイン研究所所長 川田学さんのお話は、現代の楽器作りでは「伝統を極める・新しく挑む・裾野を広める」が大切であることや、音響機器を支えている様々な技術のご紹介に始まり、「音楽・音・楽器」の本質についても考えてみようという内容でした。
特に印象的だったのは、楽器は「プレイ(play)」の道具であり、使う人に合わせて楽しみが深まっていくのが「ユーズ(use)」の道具とは異なる点であるというご指摘です。
そして、楽器と同じ観点で、都市も「長く愛されるかけがえのない場所」となるようにと、浜松への期待を語っていただきました。

 

▲山本敬之さん

ローランド株式会社経営企画室/R-MONO Lab部長 山本敬之さんには、社内同好会であるR-MONO Labの部員の皆様がつくられた様々なプロダクツを紹介していただきました。
活動の背景として、3Dプリンターやラズベリーパイなどの新しいツールと、ソーシャルウェブ(SNSやクラウドファンディングなど)によって個人でも製品を開発できるようになったこと(メイカームーブメント)や、会社と同好会の関係も説明していただきました。
この同好会活動は作り手の自己表現であるけれど、「やりたいこと」と「できること」が増えると、「社会に求められるもの」と重なり「ワクワクする新しい価値、イノベーション」も生まれるというお話に、勇気づけられた方も多かったのではないでしょうか。

 

▲吉泉聡さん

TAKT PROJECT株式会社代表 吉泉聡さんからは、「音・音楽が未来のコンパスになり得るのではないか」という提案をしていただきました。音・音楽はソフトなので扱いやすく、創造性がダイレクトに表れやすいという特徴から、これまでも新しい現象を社会に生み出してきたからです。
プロダクトデザインやインダストリアルデザインといったハードなものづくりの領域での、音楽的な手法を用いた事例紹介を通して、音楽は人の創造性を刺激する力があることを伝えていただきました。
そして、音・音楽に対する創造性が浸透している浜松は、「つくる」ことに対するポテンシャルが高いのではないかと語っていただきました。

 

▲三輪眞弘さん

情報科学芸術大学院大学(IAMAS)学長 三輪眞弘さんは、2016年の「サウンドデザインシンポジウム」におけるネヴィル・ブロディ教授の「静寂の世界を見つけることも課題」という言葉や、サウンドスケープの概念を提唱したマリー・シェーファーの「音楽が姿を消した環境は、貧しく醜いものになった」という言葉を紹介し、現代社会は音にあふれていて、人はすべての音から影響を受けているのに、そのことが意識すらされていないことを指摘しました。また、同じ音に対しても人によって意味が異なるため、コミュニケーションが重要であると語っていただきました。
そして浜松が、音楽や楽器づくりで培った耳で、音楽や音の力を通して、心豊かな社会のあり方を提案していく発信地になってほしいと期待を寄せていただきました。

 

▲佐々木雅幸さん

後半のクロストークでは、三輪さんのメッセージに対してパネリストの皆様にコメントしていただきました。つくる人(創造性の発信)と受け取る人(感じ方・意味付け)との間のコミュニケーションや、人と音の関係性を俯瞰的に、調和の中で考えてみることの大切さに共感が集まりました。

最後に、モデレーターの同志社大学経済学部特別客員教授 佐々木雅幸さんから、遊び心の中にある創造性、3Dプリンターや3Dスキャナーといった新しい創造環境、空間や社会の中での音の意味など、議論のキーワードを振り返っていただき、音楽だけでないあらゆる音、あるいは音がない状態(静寂)も含めて、その効果や活用方法を考えていくことにクリエイティビティがあるとまとめていただきました。

このシンポジウムでは、「音」をキーワードに大変広がりのある奥の深い議論をしていただき、音の持つ可能性は非常に大きいことを改めて感じました。浜松市では、今後も、様々な領域において音の可能性を広げ、音を活用した地域の課題解決や、新たな産業の振興を目指していきます。

 

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