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2020.11.18

日常の中の「芽」に気づく力。[後編]栄商会/吉澤隆さん・藤田悦子さん

~行動する時、一番大切にしていることはなんですか?~

メガネケースとぬいぐるみを合体させて「アニマルシリーズ」を作り上げた、栄商会の吉澤隆さんと藤田悦子さん。後編ではさらに続く新しいものづくりへの挑戦についてお話を伺います。

 

―― 数々の商品開発を手掛けておられますが、元々、チャレンジ精神旺盛なほうですか?

(吉澤) それもありますね。あとは「頼まれると、断れない」という性格も(笑)。 メガネ拭きやメガネケース、アニマルシリーズを手掛ける中で、革や木、樹脂など、あらゆる素材を扱うことになりますので、日本の各地でいろいろな出会いがあります。防曇透明マスク「ルカミィ」もそうしたつながりから手掛けることになった製品の一つです。

 

――  ジャンルが異なる分野に挑戦するのは難しいことではないですか?

(吉澤) ルカミィは今から7~8年前にある会社が開発したものですが、今年に入り再販を希望する声が多く寄せられたとのことで、大量生産の担い手を探しておられたんですね。以前から懇意にさせていただいている方の紹介で私どもに話がきたわけです。頼っていただく以上、何とか力になりたい。できることならやるという思いだけですよ。

 

▲高い技術から生産を委託された「ルカミィ」。コロナ禍によって需要が高まり、より工夫を加えた第二弾を計画中

 

―― 社員さんは新しい業界の製品の開発にとまどいはありませんでしたか?

(藤田) 普段から、様々な商談や受注に関する情報は共有できていますので、どんな仕事も突然で驚くというような状況にはならないんですよ。社長から「こんな感じでちょっと考えてみて」と言われると私を始め、開発に携わるスタッフは元々が企画やデザインが好きなメンバーでもありますから、発想がどんどん広がってしまって「時々は手綱を締めないと」と言われるほどに自由にやらせてもらっています(笑)。

 

▲新商品を考えるときは、まず形をイラストで描いてみることから始める藤田さん

 

―― 会社全体が自由な遊び心にあふれているわけですね。

(藤田) たとえば、「アニマルふぇいすスタンド」という製品は、耳の部分が取り外せるようになっていて、メガネでもスマホの細かいところまできれいに拭けるように工夫してあるんですね。これもスタッフのアイデアです。おかげさまでこの製品は今年の4月、全国観光土産品連盟が主催する「第60回NIPPON OMIYAGE AWARD」に選んでいただきました。自分たちの仕事が認められるってやっぱり嬉しいことですよね。

 

▲「アイデアは財産」の言葉どおり、特許や実用新案の登録にも積極的

 

―― 浜松はものづくりの環境としてどのように思われますか?

(吉澤) 浜松のものづくりの力は侮れないと思いますね。実際に浜松には鈑金やプレス、塗装、金型製作など、一流の仕事をするプロたちがいます。私らのようなちょっと変わった仕事でも本当に面白いものを一緒に作ってもらえますからね。今後も地元の技と力を活かさない手はないと思っています。

 

―― すでに動いているプロジェクトもあるんでしょうか?

(吉澤) 遠州織物のフェアで知り合った会社さんとメガネ拭きの新素材開発を行っています。これまで40年近く独壇場だったマイクロファイバーから再び天然素材を使ったものができないかと構想中なんですよ。また、今年の秋にはランドセルを浮く素材で作り、子どもを水難事故から守ろうという趣旨の「浮くランドセル」を発表予定です。元々のアイデアを考えた方が、製造先を探していて、互いの知人を介して話をいただいた案件でした。近年多発するゲリラ豪雨や河川水害、遠州地域で心配される地震津波のリスクを踏まえて、子どもだけでなく、お年寄りの方にも役に立つ製品だと思い、協力を決断しました。開発に当たって、大人の体重でもきちんと浮くように新しいウレタン素材を大学の専門研究チームに依頼するなど、機能向上も図っています。

 

―― 多方面でものづくりを行われている栄商会さんですが、今後の方向性はどのようにお考えですか?

(吉澤) 創業以来のメガネ拭きは今後も守っていきます。ただ、営業のみんなには「メガネ関連の製品という認識を外せ」とも話しています。「ものをきれいにする製品づくり」を基本に、ターゲットをきちんと見据えて、コンセプトを大切にした製品を作り続けていきたいですね。

 

―― 最後に、ものづくりを推し進める会社に必要な要素は何だと思われますか?

(吉澤) さあ、何でしょうね(笑)。僕が社員に言うのは、「正直に商売をしなさい」ということくらいですね。嘘をつくと、必ず辻褄が合わなくなるもの。正直にやっていれば、困った時に助けてくれる人が出てくるものです。やはり、最後に身を助けるのは正直さしかないですよね。あとは社員のチームワーク。なので、僕としては「社員が楽しく働けることに気を配ること」が重要なミッションですかね(笑)。

 

▲栄商会社長の吉澤隆さん

 

吉澤さんも藤田さんも、最後まで屈託のない笑顔でお話いただきました。中でも「アイデアは財産だから」との言葉が印象的。長年の経験や実績にあぐらをかくことなく、アイデアを生みだす社員やステークホルダーの皆さんとの会話を大切にすること。その姿勢こそが、日常の中にある「ヒントの芽」を基に、柔軟に発想を広げ、ものづくりを実現する源なのだと気づかせてくれたように思います。

 

 

 

株式会社 栄商会

栄商会の代表取締役である吉澤隆さんと製品づくりの最前線を担う藤田悦子さん。創業当時から続くメガネ拭きメーカーとしての道だけでなく、アニマルシリーズなどを始めとする雑貨商品の企画・製造という従来の枠を越えたものづくりを展開。長年の経験から培われた技術力とユーザーの使い勝手を追求する企画力で業界でもオンリーワンの地位を確立しています。

http://www.sakae-firm.co.jp/

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