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2020.11.16

日常の中の「芽」に気づく力。[前編]栄商会/吉澤隆さん・藤田悦子さん

~アイデアを練るのは、誰のためですか?~

 


私たちの身の回りにあるぬいぐるみやメガネスタンド。それをひとつに合体させるという発想力で、今までになかった商品が生まれました。そんなメガネスタンド「アニマルシリーズ」や表情を隠さないマスク「ルカミィ」などを手掛ける栄商会を訪ね、社長の吉澤隆さんと企画デザイン担当の藤田悦子さんに、ものづくりのマインドについてお話を伺いました。

 


▲「あったら面白いから」斬新な発想力で栄商会を率いる吉澤隆さん

 

―― ぬいぐるみとメガネスタンドが一体化した「アニマルシリーズ」。開発のいきさつについて教えてください。
(吉澤) 私の子どもの話になるんですが、勉強の時だけメガネをかけることが多かったんです。無造作に置かれたメガネを見て「子どもには子ども向けのメガネスタンドがいるんだな」と思いましたね。今から15~16年ほど前の話です。
(藤田) 社長から「子どもが使えるメガネスタンドを考えてくれ」と話がありました。そこから私たちがデザインを考え、社長のアドバイスなどもあって、アニマルシリーズが生まれました。

 

―― 動物の口の部分にメガネを入れるようになっているんですね。
(藤田) そうですね。メガネをしまう口の中をメガネ拭きの素材で作れば、メガネを収納するだけでなく、きれいにすることもできて一石二鳥なんですよ。

 

―― それまではそんな形をしたメガネスタンドはなかったわけですよね?
(吉澤) 日本のメガネ人口は多いわけですが、老眼鏡を入れるような革や樹脂、木製の立派なメガネスタンドはありましたけどね。子ども向けに考えられた製品はなかったと思います。

 

―― 一見、誰でも考えつきそうなのになかったと。
(吉澤) なかったですね。メガネケース業者も考えなかったし、ぬいぐるみ屋さんも考えなかった。

 

―― ライオンやカバ、ワニ、そして犬。バリエーションもたくさんですね。
(吉澤) 最初に作ったのはライオンでしたね。大きな口を開けるのは猛獣だろうという単純な発想で(笑)。で、展示会に出品したところ、「これで犬を作ってくれ」「猫を作ってくれ」とリクエストが次々と入るようになりました。
(藤田) 犬を飼われている方って多いですよね。犬を製品化した後も「うちの犬を作ってほしい」と、さらにリクエストをいただくようになったんです。

 


▲企画デザインを担当する、藤田悦子さん

 

―― お客様からの反響がすごかったということですね。
(吉澤) メガネ屋さんにとってもそれまでにない商品だったということですよね。メガネ屋さんは店内に視力測定機などの無機質な機械が設置される環境です。そこにアニマルシリーズが置かれると、空間にぬくもりが生まれ、お客様と従来とは違うコミュニケーションが図れるという感想もいただきました。

 

―― いきなり生まれたヒット作。その開発の中で最も大切にしたことは?
(吉澤) アニマルシリーズに関して言えば、「誰のためのメガネスタンドか」を追求したといえますね。子どもと一口にいっても千差万別。年齢、性別で興味も関心も大きく異なります。漠然と子ども向けと考えるのではなく、「これは幼稚園児向け」「これは小学校の女の子向け」とターゲットを分けることが重要ですね。不思議なもので細かくターゲットを設定したほうが、いろいろな発想が湧いてくるものです。
(藤田) 私たち社員もそれまでにない製品づくりでしたが、みんな面白がってやりましたね。

 

―― そもそもはメガネ拭きの製造を生業にされていたと伺っています。
(吉澤) 栄商会は、昭和23年に私の父が創業した会社です。当時は地場産業である磐田市福田の「綿別珍(めんべっちん)」を使ったメガネ拭きを生産していました。染色から裁断、縫製、印刷の一切を工場内で手掛けていたわけです。その後、昭和57年にマイクロファイバーが登場しました。髪の毛の1/100の細さという性質から汚れを掻き取る性能に注目が集まり、「メガネ拭きに良いのでは?」と、当社に製品化の話が舞い込み、現在に至るまでマイクロファイバーのメガネ拭きを生産してきた歴史があります。

 

 


▲機械による自動化が進む工場だが、創業当時からの手動式の機械も現役で活躍している

 

―― 事業拡大の経緯はどのようなことだったのですか?
(吉澤) 今から20年ほど前、業界に価格破壊の波が訪れました。それこそ半分の価格ほどにコストダウンを迫られたほどでしたね。そこで大幅な工場の機械化などを進めて対応したわけですが、いつまでも「メガネの付属品」だけを作っていてもダメだと。きちんとものづくりをし、独り歩きする製品を作っていかなければ、これからは成り立っていかないだろうと思いました。

日常のちょっとした出来事からヒントを得て、それまでにない製品「アニマルシリーズ」を作り上げた栄商会の発想力。後半では、その他のオリジナル製品や他業種との連携についてなど、新しい試みについてさらにお話を伺います。

 

 

 

株式会社 栄商会

創業当時から続くメガネ拭きメーカーとしての道だけでなく、アニマルシリーズなどを始めとする雑貨商品の企画・製造という従来の枠を越えたものづくりを展開。長年の経験から培われた技術力とユーザーの使い勝手を追求する企画力で業界でもオンリーワンの地位を確立しています。

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