創造都市・浜松

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トピックス

2018.03.22

自分自身の好奇心に出会う 鴨江アートセンター

 

今、浜松で起きている面白いこと。

まだ、小さなムーブメントかもしれないけれど、

なぜか惹きつけられてしまう、不思議な魅力がある。

その秘密を探ってみると、「創造都市・浜松」の明日のカケラが見えてくるかもしれない。

 

〜未知なる世界に飛び込む勇気はありませんか~

 

1アート

 

1928年(昭和3年)、浜松警察署庁舎として建てられたこの建物。時を経て現在は「鴨江アートセンター」として創造都市・浜松の拠点的役割を果たしています。アーティストによる展示や、「OUT OF SCHOOL」、「アトリエまぜまぜ」、「ひみつの幼稚園」、「活版印刷と3Dプリンター」、「地元のはちみつ」など、さまざまなワークショップやイベントが開催されています。浜松の様々な創造的活動に触れられ、市民が創造性を発揮できる場所です。

 

しかし、アートにはあまり馴染みがなく、自分にとってどう関係があるのかよく分からない、と言う方も多いと思います。

 

開館して4年。改めて、鴨江アートセンターって一体どういうところなのか。取材に行ってきました。

 

取材当日はイベントも少ない平日。市民グループの練習する歌声が静かに響く中、1階ホールで読書をする人がいたり、入居するアーティストがスタッフと会話をしていたり、まるで放課後のようなゆるやかな時間が流れていました。

 

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▲1928年(昭和3年)、浜松警察署庁舎として建てられたレトロなデザインの建築。

 

「違う」を楽しむ

 

まずは、一般社団法人浜松創造都市協議会の理事であり、昨年、鴨江アートセンターの館長に就任された、村松厚さんを訪ねました。

3アート

ーー一言で言うと、鴨江アートセンターはどのような場所でしょうか?

 

(村松)人が交流する場所だと考えます。また、価値の転換、知識や技術などを交換する場所でもあります。浜松市はいろんなものがありますが、そのような「場」が少ない。そのためにも、多様な価値観、嗜好を持った人が集まりやすい場所、浜松らしいアートセンターを作りたいと考えています。

 

ーー「浜松らしい」と言うと。

 

(村松)浜松に創造的な人材を引きつける魅力は、企業にあると考えます。ヤマハ、ヤマハ発動機、スズキ、カワイ、ローランド、浜松ホトニクスなど、さらに、静岡大学や静岡文化芸術大学も含まれます。創造都市とは、アートを中心に、その影響が産業や地域、人々の活動に広がっていくこと。残念ながら、浜松にそこまでの影響力を持つアートはまだありません。でも、アントレプレナーシップ(企業家精神)があります。音楽分野での創造都市・浜松は、1887年に山葉寅楠がヤマハを創業したことにあると言ってもいいかもしれません。

 

ーー地元の企業と協働した活動をしていくということですか?

 

(村松)具体的にはこれからですが、アートとテクノロジーの融合、企業のエンジニアやデザイナーが鴨江アートセンターに滞在して仕事をするのも面白いと思います。世界に創造都市は100以上あり、課題も強みもそれぞれで、ひとつとして同じ都市はありません。浜松らしいクリエイティブなものが生まれるために、鴨江アートセンターが浜松の強みを生かし、どうやって機会に変えるか試されています。

 

ーーこれまでもさまざまなワークショップやイベントを開催していますね。

 

(村松)年間50のワークショップやイベントを行い、子どもだけでなく、大人、シニア、健常者も障がい者も、多様な人が参加し、年間3万人がここを訪れています。一般的な美術館の来館者が3万人といわれているので、この数は健闘している方だと思います。設立してからの4年間が基礎づくりの期間だとしたら、次の5年間、何をしていくかがとても大事になってきます。

 

ーー最後に、「アート」とは何だと思われますか?

 

(村松)難しいですよね(笑)仕事の関係でヨーロッパに10年ほど滞在していました。美術が好きで、50カ国、150都市ぐらいの美術館に行ったんですね。僕にとってのアートは「非日常性」。デイリーでない場所で、自分が何かを感じること。インタラクティブ性というか、絵が訴えるものを吸収したくて美術館を訪れています。それは、自分が発見したものが何であるかが重要であって、人がいいと言ったものが自分にとってよくなくてもOKだし、その逆でも構わない。アートの感じ方は百人百様。みんな違って感じていいし、その自由さが大事なのですから。

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新しい出会いと将来の夢を描くことができた場所

 

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▲大重亘輝さん 浜松学芸高等学校3年生

 

あまり知られていませんが、鴨江アートセンターの2Fロビーは、誰でも自由に使えるオープンスペースになっていて、事務所に許可を取る必要もありません。そのロビーをよく使っている高校生がいると聞いたので、話を聞いてみました。

 

ーーここで何をしているんですか?

 

(大重さん)受験勉強をしています。塾以外で自習できる場所を探していてさまよっていたら、昨年の夏頃、ここにたどり着きました。鴨江アートセンターのことは知っていましたが、こんなスペースがあるとは知りませんでした。なかなか居心地がよく、勉強もはかどります。

 

ーー鴨江アートセンターってどんな場所だと思いますか?

 

(大重さん)人と人がつながれる空間ですね。

 

ーー勉強しに来ているのに邪魔じゃないですか?

 

(大重さん)ここに来る方たちは気軽に声をかけてきますが、いい距離感を持って接してくれるんです。だからストレスに感じることはないです。むしろ、いい刺激をもらえるし、得ることも多いです。僕にとっては、いろいろな方と会えることが重要な場所になりました。むろん、勉強するときはしっかりさせてもらっています。

 

他の公民館や公共施設などのフリースペースも使わせてもらいましたが、ここの空気感はまったく違いますね。建物のせいなのか、ここに来る人たちのせいなのか、うまく言えないんですけど、確かに違うんです。

 

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受験勉強のまっただ中の大重さん。最初は漠然と進学を希望していましたが、鴨江アートセンターに来るようになって、自分の将来を具体的に描くようになったそうです。それは、工業デザイナーを目指し、海外で働きたいという夢。将来が楽しみです。

 

 

鴨江アートセンターでしかできないイベント

 

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▲COTEF(コテフ) 津ヶ谷小百合さん

 

ミュージシャンであり、音楽イベントを企画・主催している津ヶ谷さん。料理人であるご主人と一緒に行うParlor COTEF(パーラー コテフ)というインスタレーションイベントは、音楽とごはんが魅力。鴨江アートセンターでもイベントを行っている津ヶ谷さんに、使う側からみた施設のいいところを聞いてみました

 

ーーイベント会場としての鴨江アートセンターはどうですか?

 

(津ヶ谷さん)具体的に説明できないんですが、音の響き、吸収、回り方が独特で面白いです。アートセンターと言っても、もともと文化のために建てられた建物ではないので、使うときには考えなければいけないことがたくさんあります。私たちのイベントは料理が絡むことが多いので、よく104号室(この部屋には簡易なキッチン設備がある)を使います。あの部屋は、部屋の中に柱が何本かあり、小部屋があって使いにくい。でも、それをどううまく使うか、こちらの発想が試されている気にもなるんです。それがいい刺激になるし、想像以上のことが起きたりします。

 

——創造性が試されるというか。

 

(津ヶ谷さん)何かするには、とてもやりがいのある場所ですね。私たちのように音楽だけでなくいろんな要素が絡むイベントをしていると、普通の施設だと制約が多くできないことも多い。でも、ここでは自由にやらせてもらっています。スタッフの方も見守ってくれますし、理解しようとしてくれる感じが伝わってくる。鴨江アートセンターでするイベントは、鴨江アートセンターでしかできないですよね。この場がイベントをオリジナルなものにしてくれる気がしますね。

 

ーー「場」としてはどう感じますか?

 

(津ヶ谷さん)独特ですよね。他の会館とはやっぱり違う。準備に来ると、他の部屋からコーラスや楽器の音が聞こえるんです。すれ違いざまやロビーで会話が生まれたり。そんなとき、いろんな人がこの建物を共有しているのをすごく感じるんです。アートだけでなく多様な分野の人たちが「貸館」として使っているところも、ここの面白さなんじゃないでしょうか。いろいろな人の気配の積み重ねがここの「場」の雰囲気を作っていると思います。

 

「もっと新しいことを見つけたい」。そう津ヶ谷さんは話します。私たちもその「新しい刺激」を受け取るときを楽しみに待ちたいと思います。

 

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▲インスタレーションイベント「ゴールデン存在感 vol.9」より

 

 

単なる勉強から、目的ある夢を見つけた高校生の大重さん。創造性を刺激する環境が新しい表現につながるというコテフ・津ヶ谷さん。この場所は、自分の中にあるなんとも表現しがたい気持ちに触れられる場所なのかもしれません。また、年間50回以上行われるワークショップ、さまざまな人との交流、知識や技術を交換する場を目指す館長の言葉には、「新しい価値観」に触れられるきっかけを作ろうとする思いを感じることができました。鴨江アートセンターには美術館のような高尚な作品はありません。でも、アートを「新しい価値観」と捉えるならば、ここには数多くのものが用意されています。好奇心という勇気を持って、まずは触れてみることがアートを知る第一歩となるのではないでしょうか。

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